タイムカードを導入していれば完璧?タイムカードに潜む企業リスク。
2018.04.26
現在多くの企業が、勤怠管理システムやタイムカードを活用して労働時間の適正な管理に取り組みを始めています。ただ、こうした勤怠管理システムやタイムカードを導入していれば完璧かというと決してそうではありません。タイムカードですが、便利なものであると同時に運用を誤ると企業に於いて大きなリスクを招きかねません。
目次
タイムカードの打刻時間=労働時間として、法で定められているのでない
本来労働時間とは、使用者の指揮命令の下、実際に業務に従事している時間を指します。
タイムカードの打刻時間=労働時間として、法で定められているのではありません。
例えば、始業時間が9時の会社に於いて、タイムカードの打刻時間が8時だった場合は、どうでしょうか?
この8時の打刻が、使用者から出勤を命じられて、実際に業務に従事しているのであれば、労働時間として計上せねばなりません。使用者からの指揮命令があるからです。
タイムカードに潜む様々な企業リスク
では、使用者の指揮命令がないにも関わらず、自らの意思で勝手に早く出社した社員の場合は労働時間として計上する必要があるのでしょうか?
よくあるケースとして通勤ラッシュを回避する為、始業時間より相当前に出勤し、新聞を読んだり、朝食を取ったりする社員の方は多いと思います。また、喫煙したり同僚と話をする時間は、労働時間といえるのでしょうか?
このような時間は労働時間とは言えません。労働時間とは、労働時間は使用者の指揮命令の下、実際に業務に従事している時間です。
もし・・
指揮命令がないにも関わらず早出出勤し、出社と同時にタイムカードの打刻を行ったらどうなるのでしょうか?
仕事が定時で終わったにも関わらず、仲間内で雑談に興じた後、タイムカードの打刻を行ったらどうなるのでしょうか?
ここにタイムカード運用の大きなリスクが潜んでいます。
行政サイドは、タイムカードの打刻がある以上、それに沿った指導を行うのが基本
労働基準監督署の調査は突然入ります。調査では、一般的に勤怠記録及び賃金台帳等の提示を求め、適正な労働時間管理及び適正な賃金支払いが行われているかを確認します。
勤怠記録の確認の為、タイムカードの打刻時間を調査しますが、早出出勤が散見される場合は労働時間として認識されることが多々あります。
労働時間として認識される以上、賃金支払いについても当然、当該時間が割増賃金の計算対象時間として含まれているか?という調査を行います。
調査の結果、早出出勤の時間が、割増賃金の算定に含まれておらず、未払賃金として指導の対象となることがあります。行政サイドとしては、タイムカードの打刻がある以上、それに沿った指導を行うのが基本だからです。
明確に反証できる材料が企業側に必要
多くの企業に於いては、当該時間は労働者が自らの都合で勝手に出社したものと抗弁しますが、現実としてタイムカードの打刻がある以上、労働時間ではないと主張するには、明確に反証できる材料が企業側に必要となります。
例えば、早出出勤を命じる際は、上長からの指示書、命令書等の提示があり、恒常的に指示書等の運用が行われていれば、反証材料となるでしょう。早出出勤は、あくまで会社の指揮命令下によって行われているということを示す根拠になるからです。指示書等の提示がない場合は、単に早く出勤しただけという抗弁の裏付けが不足してしまいます。
反証材料がなければ、行政はタイムカードの打刻時間=労働時間と同一視してしまいます。打刻という明確な事実がそこにあるからです。タイムカードとは入室退室の時間を記録するものです。出社時、退社時に無意識にタイムカードを打刻させるのではなく、業務開始時、終了時にタイムカードを打刻することを明確に指導しないと思わぬ落とし穴に落ちることになります。労働時間の開始と終了までを、タイムカードで管理しようとするならば、労働者に対し労働時間の定義についての教育が必要です。
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