メリットしかない!中小企業退職金共済制度とは
2018.08.05
ベンチャー企業では、退職金制度を設けてない会社は多いのではないでしょうか。退職金制度は法律上、定めなければならないものではありません。ただし、これからの就業人口減少が進む中、優秀な人材の確保は重要な施策です。残業時間抑制等の労働環境の向上、その他福利厚生を充実させることにより、優秀な人材を確保し、流出を防ぐ施策を講じる必要も出てきます。
本記事では、社員への福利厚生の一環として、退職金制度の導入を検討してみようと考えている会社に、導入も管理も利便性の高い中小企業退職金共済制度(中退共制度)をご紹介致します。
目次
中小企業退職金共済制度とは
中小企業退職金共済制度(中退共制度)とは、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度です。中退共制度を利用すると、安全・確実・有利で、しかも管理が簡単な退職金制度が手軽に作れます。 この中退共制度は、独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(中退共)が運営しています。
■制度の目的
中小企業者の相互共済と国の援助で退職金制度を確立し、これによって中小企業の社員の福祉の増進と、中小企業の振興に寄与することを目的としています。
■制度のしくみ
事業主が中退共と退職金共済契約を結び、毎月の掛金を金融機関に納付します。社員が退職したときは、その社員に中退共から退職金が直接支払われます
国による掛金助成制度
■新規加入掛金助成
(1)中退共制度に新たに加入する事業主に、加入後4か月目から、
掛金月額の2分の1(上限5,000円)を1年間国が助成します
(2)パートタイマー等短時間労働者の特例掛金(掛金月額4,000円以下)
加入者については、(1)に次の額を上乗せして助成します。
・掛金月額2,000円の場合は300円
・掛金月額3,000円の場合は400円
・掛金月額4,000円の場合は500円
※ただし、次に該当する事業主は、新規加入助成の対象にはなりません。
・同居の親族のみを雇用する事業主
・社会福祉施設職員等共済制度に加入している事業主
・適格退職年金制度から移行してきた事業主
・存続厚生年金基金(解散存続厚生年金基金)から
移行の希望を申し出た事業主
■月額変更(増額)助成
掛金月額が18,000円以下の社員の掛金を増額する場合、増額分の3分の1を1年間国が助成します。
※同居の親族のみを雇用する事業主は、助成の対象にはなりません。
※助成額の10円未満の端数は、切り捨てになります。
掛金助成は助成金を支給する方法でなく、掛金から助成金を免除する方法により行われます。その間は、掛金月額から助成額を控除した額が口座振替されることとなります。
法人企業の場合は損金として全額非課税に。管理も簡単。
中退共制度の掛金は、法人企業の場合は損金として、個人企業の場合は必要経費として、全額非課税となります。資本金または出資金が1億円を超える法人の法人事業税については、外形標準課税が適用されますのでご留意ください。
また、毎月の掛金は口座振替で納付でき、加入後の面倒な手続きや事務処理もなく社員ごとの納付状況、退職金額を事業主にお知らせしますので、退職金の管理が簡単です。
【メリット①】退職金の受取方法が選択できる
退職金は退職者本人が退職時60歳以上であれば、一時金払いのほか、全部または一部を分割して受け取ることができます
【メリット②】掛金月額の選択ができる
掛金月額は、社員ごとに16種類から選択できます。また、掛金月額はいつでも変更できます。掛金月額の種類は上記の16種類です。事業主はこの中から社員ごとに任意に選択できます。
短時間労働者(パートタイマー等)は、上記の掛金月額のほか特例として次の掛金月額でも加入できます。
※参考
短時間労働者とは、いわゆるパートタイマー等1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用される通常の社員より短く、かつ30時間未満である社員をいいます。申込時に短時間労働者であることの証明書(「労働条件通知書(雇入通知書)」または、「労働契約書」の写し)が必要です。
【メリット③】掛金月額の変更ができる
掛金月額は、加入後、「月額変更申込書」を事前に提出することでいつでも増額変更することができます。18,000円以下の掛金月額を増額する事業主には、増額分の3分の1(10円未満の端数は、切り捨て)を増額月から1年間、国が助成します。
ただし、事業主と生計を一にする同居の親族のみを雇用する事業主は、助成の対象になりません。また、20,000円以上の掛金月額からの増額は、助成の対象になりません。
掛金月額の減額は次のいずれかの場合に限って行うことができます。
・掛金月額の減額をその社員が同意した場合
・現在の掛金月額を継続することが著しく困難であると
厚生労働大臣が認めた場合
中退共の導入のメリット(まとめ)
退職金制度については一般的に「内部留保型」、「外部積立型」がありますが、中退共は外部積立型の制度であり、独立行政法人 勤労者退職金共済機構が運営する退職金制度です。
主要な利点は以下のとおりです。
①社員が2年間勤務すれば掛金総額を上回る退職金が積み立てられる。
(利息が付加される)
②社員が3年6ヶ月を超えて長く勤務すればするほど
退職金の額は効率よく増える。
③税法上の特典がある
(掛金全額が損金算入⇒会社の税負担が軽くなる。)
④国の助成がある(掛金月額の1/2を加入後4ヶ月目から1年間助成)
⑤掛金には税金がかからない。
⑥退職金支払に際して会社が不利益を被るリスクがない。
⑦社員は提携のホテル・レジャー施設等を割引料金で利用できる。
⑧管理が簡単である。
⑨退職金の受取方法が選択できる。
上記の中でも、大きな利点は、③④⑥です。
③税法上の特典がある
中小企業退職金共済の掛金は全額が損金算入されます。
これに対し現金・預金で積み立てようとすれば、税金支払後の税引後利益から積み立てなければなりませんので、中小企業退職金共済に加入した方が、加入しない場合よりも税負担が軽くなります。また、掛金は給与扱いとされませんので、社員に於いても「給与所得」として所得税が課税されることもありません。
④国の助成がある
社員の退職金の原資である掛金の一部を国が助成してくれます。
(中退共加入4か月目から1年間、掛金の半額を負担)
⑥退職金支払に際して会社が不利益を被るリスクがない。
退職金は中退共から社員に直接支払われます。会社が支払うものではありません。よって、会社には益金も損金も発生せず、会社が不利益を被るリスクがありません。
つまり、退職金を支払うことで赤字を招くリスクはゼロです。これに対し、養老保険等で退職金制度を運用している場合は、解約返戻金を受け取ったら益金算入、退職金を支給したら損金算入されるので、タイミングがずれると会社が損をするリスクがあります。したがって、中小企業退職金共済の方が、損益計上のタイミング調整に失敗するリスクを考える必要がありません。
中退共は在職中については、掛金全額が損金算入退職後は益金、損金発生なし。退職後の支払いは退職者自身が請求手続きを行いますので、会社は事務作業、退職金計算の手間がかからないということになります。
退職金制度の導入を検討している場合、中退共も選択肢の一つに加えるのは如何でしょうか。
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